ロザリオを追って編
第1話 プロローグ
おあつは、貧乏である。
世間的に、みれば貧乏ではない。
なぜなら、彼女は、最低限の衣食住は確保されている。
(参考までに例え住んでいる住居が、ダンボールハウスでも、食事は、カロリーメイトの偽者でも、
着ている服は、破れていても!)
そして、それは、少なくとも現時点で一ヶ月は保障されている。
(労働基準法の範疇です)
それでも、彼女のことを皆、貧乏という。
なぜか?
それは、今回の事件で又も証明される。
そして、今回の事件で彼女は、その事を痛感する。
しかし、教訓を得たかどうかは別である。
まして、そのこと自体に気が付いたかどうかも不明である。
今回の記事を書くにあたり、筆者は切に願う。
願わくば、彼女が次の事実を悟って欲しい。
「貧乏人の銭失い」
この記事が、彼女の知るところとなり、この事実を受け入れ理解する事を望む。
それでは、今回の事件を紹介しよう。
2003年も終わりに近いある日のお昼休みの時間の事である。
事件のきっかけは、ささいな事から始まる。
(参考までに、我々にとっては、些細どころかどうでも良いのだが、
彼女にとっては、重大な出来事である。)
彼は、自分自身に、ご褒美を上げようとしていた。
(参考までに、客観的に見て、ご褒美を上げるような事は何もしていない)
丁度、来月は彼女の誕生日である。
(参考までに、誕生プレゼントは他人、家族、友人、恋人にもらうものである)
何にしようか、考えたとき、彼女の頭に、電気が走った。
(参考までに、自宅には、電気はまったく走っていない。平たく言えば電気は、
通っていないのである。)
「今度、みんなで温泉旅行にいくのね。その時、すてきなネックレスをしていったら、
もう誰もあたしのことを貧乏といわない。そうよこれだわ!」
(参考までに、何を持っていようが、それは問題ではない)
これは、彼女は口にした言葉ではない。周りの証言によると、彼女の表情に、はっきり
でていたそうである。
(参考までに、彼女は自分のことは、ポーカーフェイスだと思っているが、周り
は全然そう思っていない)
彼女は、ネックレスを探し始めた。
(参考までに、町に探しにいったのではない。その理由は今、明らかになる))
世間では、インターネットオークションなるものがはやっていて、そこでは、
ものが安く買えるらしいことを彼女は思い出した。
(参考までに、ネットオークションでは、安く買えるものは多くない。
By Yahooオークション評価240のユーザー)
探した、探した、彼女は必死で探した。
(参考までに、勤務時間内である。いったい、いつ仕事をするのであろうか?)
「あった、これこそ、あたしにふさわしい、ネックレスだわ!」
彼女は浮かれた。
自爆の罠にはまったことは、まだ自覚はない。
ただ、無邪気に喜ぶ彼女だが、第一の自爆の罠が口を広げて待っていた。
第2話 第一の自爆の罠
インターネットオークションは、簡単である。
ユーザ登録をすれば、誰でも簡単に参加できる。
そして、そのプロバイダの無料サービスには登録している。
ここで、また自爆の罠が待っていた。
彼女が利用しようとしているオークションは、有料だった。
(もちろん、無料のオークションはあるが、そんなことは彼女はしらない)
彼女は、あせった。
なぜなら、彼女は、登録料が払えないのである。
どうすればいいか?登録料は、はらえない。
とすると。
登録している人に、頼べば、ただですむ。
彼女は、自分のアイデアに満足した。
自爆というより、墓穴を掘った。
その話は、次回に譲る。
今回の話は、ほんの小さな出来事だったと、現在では、考えられている。
第3話 連続自爆。回数はもう数えても意味なし。
話は、一気に進む。
おあつはとなりの席の両ちゃんに、声をかけた。
「ねえねえ、あたい、オークションで買いたいものがあるんだけど」
「なにを買いたいの? ユーザー登録してあるから、おあつの変わりに、買ったあげるよ。」
予想通りの答えである。おあつは自分が欲しいものを、示し両ちゃんに、入札してもらった。
「落札代金とかは、自分で払えよ」
両ちゃんの言葉に、おあつは、反論した。
「当然、払うわよ。今まで払わなかった事ある?」
両ちゃんの頭に、疑問がよぎる。
こいつ、相当借金してるし、週末の旅行のお金だって。
何よりも落札した後、金払えるのか?
これが、別な事件に発展してゆくとは、さすがの
両ちゃんでも、予測不能だった。
話を、戻そう。
落札終了時間は、昼休みである。
もうすぐ、あの、あこがれのロザリオが自分の物になる。
おあつの興奮は、頂点に達した。
おあつは、忘れていた。
彼女は、興奮のあまり、自分のおかれている環境に気が付かない。
右横で、獲物をねらう狩人のごとく、目を光らせている人物がいた。
それは両ちゃん。
後ろで、前日の二日酔いを、楽しんでいる人物。
それは王様。
そして、その横には、仕事をしているふりをして、何か楽しい事がないか
探している人物。
それは、王子。
おあつの左隣には、「フン、フン」を連発しながら
まわりを圧倒している人物。
それは、塩様。
両ちゃんは、状況を確認した。
罠は、完成した。
獲物は、またも同じ罠に、はまった。
後はタイミングである。
王様が、タバコを吸いにいった。
狩の始まりである。
Time to Hunt!
第4話 狩の時
王様が、タバコを吸い終わり、席に戻った。
「何かある」
王様の頭に電気が走る。
(もちろん、王様の家は電気は通っている。誰かと違って止められた事はない)
「おい、何かあったのか?」
王様が、両ちゃんに言った。
「実はですね、おあつが、オークションで...」
すべて言い終わらない内に、王様が言った。
「何を落とすんだ?。すぐ教えろ」
両ちゃんが言った。
「まさか」
「決まってるだろう、値を吊り上げるんだ!」
王様の横では、王子が、品物を検索し始めた。
こうなると、王子はすばやい。
「あった!」
と、王子。
「これだな。よし」
と、王様。
「フン、こんなの欲しいの?」
塩様まで、見つけた。
罠は、閉じられた。
おあつは、不安になった。というよりも、状況が理解できない。
自爆に始まり、それがさらに墓穴になっている事も。
そう、彼女は、狼の群れに、自ら飛び込んだのである。
「よっしゃ、8000円、入札しといた。今、最高額だ」
おあつの入札金額は、あっさりと越されてしまった。
「よーし、みんなどんどん入れろ!」
王様が、意味不明の激を飛ばす。
おあつは慌てた。なけなしのお金から、払うはずだったのに。
安く買えると思ったのに。
「ちょっと、待ってください。何でみんな・・・」
誰も聞く耳は、持っていなかった。
その後、王子も入札しようとしたが、自分のIDを忘れたため、
不参加だったが、そこは王子。
他人の不幸は、蜜の味。
「ねえ、ねえ、おあつ。落札しても、お金は、はらわなきゃ、
いけないんだよ。こんな、大金払えるの?」
ありとあらゆる角度からの突っ込みに、おあつは、圧倒され、自爆した時の態度。
頭の中は、まっしろ。
言葉は、理路不整然。
ついでに、声は、上ずっている。
我に帰り、両ちゃんに、改めて入札金額を上げてもらう。
そして、再び最高入札者になった。
「やったわ。あたいの勝ちね。貧乏人をなめると、こうなるのよ」
安心もつかの間。
「おあつ、もう一回みてごらん」
王様の一言に、おあつはあせった。
金額を確認した。9000円になっていた。
「信じらんない!」
「それが現実。」
王様が、突っ込む。
オークション終了まで、あとわずか。
はたして、おあつは、最高額入札者となれるのか?
第5話 けっきょく、その時楽しめれば。
結局、その後は誰も入札せず、おあつは、無事、落札できた。
「結局、みんな、何がしたかったの!」
おあつは、悲痛な叫びを上げた。
それは、そうだろう。王様が、参加しなければ、
もっと安く買えたのだ。
王様が、答えた。
「だって、おもしろいんだもん」
その周りでは、両ちゃんと、王子が笑みを浮かべて、
笑っていた。
第6話 後日談は、山ほど
後日談その1
今回のお買い物は、週末の旅行用に買ったものだった。
しかし、彼の手元には、結局届かなかった。
なぜか?
届け先の住所が、間違っていた。
そして、受け取り主不明と言うことで、送り主に返送されていた。
期日に届かなかっただけではなく、送料がさらにかかってしまい、
おあつの生活を圧迫していった。
後日談その2
何週間後、おあつにメールが届いた(はずである)
そこには、おあつのロザリオと同じものの、写真が写っていた。
そう、王様は、買っていたのだった。
おあつよりも安く!
その事実が欲しいだけなのに、王様は、購入したのだった。
後日談その3
ロザリオは、女性用である。
なので、その鎖は、とても短い。
おあつは、首の太さが通常の女性の3倍あるので、あっさりと、切れてしまい、
その修理費用が、おあつの生活をまたも、圧迫したのだった。
(その後、数回にわたり、切れたらしい。)
その後のロザリオの運命は、いかに。
後日談その4
2004年7月現在、ロザリオのオークション価格は、
3000円代から4000円代である。
そう、今では半額以下で、買えるのだ!
おわり