ブルーなコンパ編

 

第一話 電車の中で・・・

 

これは、あつをが三河で働いていた頃のお話

 

ある金曜日のオフィス・・・

 

あつをの職場は遠方から出張で来ているメンバーが多いため、

移動日の金曜は早めに帰る人が多い。

 

あつをもその中の一人だが、その日は定時を過ぎても残業をしていた。

周りから見れば、仕事が忙しく頑張っているように見えたかもしれないが、

実際のところは仕事ではなくコンパまでの時間潰しをしているだけだった。

 

そう、この日あつをは職場の同僚に誘われたコンパに行くことになっていた。

 

電車の時間に合わせて仕事を切り上げオフィスを出たあつをは駅へ向かった。

「ふぅ、いつものように自然に出て来れたわ。

 あとはコンパの待ち合わせ場所に向かえばOKね」

「現地に着くまで誰に会うか分からないし、まだまだ気は抜けないわ。

 名古屋に一泊してまでコンパに行くなんてことがバレたら、

 職場のみんなに何て言われるかわかったものじゃないし・・・」

そんな事を考えているうちに駅に着き、あつをは電車が来るのを待った。

 

もう少しで電車が到着するという時になって、

あつをの視界に見慣れた人影が映った。

同じ職場のイ○しゃん所長の二人である。

 

あつをに気が付いた二人は声を掛けてくる。

「おう、あつをじゃないか。」

おあっちゃん、お疲れさま〜」

 

「あっ、お疲れ様です」

(やばいわ、この二人にはあたいが関東に帰ることがばれてる。

 しかも、イ○しゃんとは名古屋からの新幹線の方面まで同じだわ・・・)

(あたいが途中の駅で降りたらどこに行くか聞かれるわ。

 何とかコンパに行くことバレないようにしなきゃ)

 

そんなあつをの悩みにお構いなく、電車は到着し3人は電車に乗り込んだ。

 

電車の中で世間話が始まったが、あつをはどこか上の空だった。

不意に、イ○しゃん

あつを、今日は帰るんだろ?名古屋から新幹線か?」と話を振ってきた

 

一瞬の沈黙の後・・・

「えっ、ええまあ」

と冷静を装い返事をするあつを

 

だが、イ○しゃん所長あつをの目が泳いでいたことを見逃さなかった。

 

普通に「ちょっと寄り道してから帰ります」とか言っておけば

ここまで追い詰められることは無かったのだろうが、

正直者のあつをにはそんな器用な真似はできなかったのだ。

 

刻一刻と目的の駅が近づき、あつをは決断を迫られていった。

(どうしよう、何ていって電車を降りればいいのかしら)

(さっきはっきり言わなかったから、何を言っても怪しまれるだろうし)

 

目的の駅まであと一駅と迫ったとき、あつをは覚悟を決め、降りる体制に入った。

「あれっ、あつをもう降りるの?」

名古屋まで行くものと思っていたイ○しゃんが、ちょっとビックリしたように聞く。

 

「えっ、ええ・・・実はコンパに誘われてて・・・」

諦めて本当のことを話すあつを

 

「なんだ、そうだったんだ。さっきから様子がおかしいと思ってたんだよな。

 最初から言ってくれればいいのに」とあっさり受け止めるイ○しゃん

 隣で所長がにこやかに微笑んでいた。

 

気まずそうにしているあつを

「月曜にどうなったか教えろよ」と、イ○しゃん。

おあっちゃん、頑張ってくるんだよ〜」と、所長。

 

大人な二人に見送られ、あつをは目的の金○駅に降り立った。

 

つづく