表皮材(1)

ちょっと趣向をかえて’表皮材’の話である。

表皮材、シートの表面の事、布地である。
シートの構成部品の中で、8割近いコストを取っていく部品なのである。
実質、直接的に人体と車との間に介在する、非常に重要なファクターである。
バスなどはともかく、車に乗ったら普通の人は座る。(であろう。座らない人、手を上げて!!)
座り心地評価でも重要な要因となっている。

開発の流れとしては、前出の’試作パッド’を用いて’形紙’をおこす。
洋服を作るときの’形紙’とまるっきり同じである。
そして、その’形紙’を元に布地を裁断していき、デザイナーが起こすパターン図指示により、物縫い、合わせ縫い、シングルステッチ、ダブルステッチ、玉ぶち、といったように縫い合わせていく。

縫い合わせるのは’ミシン’である。
が、普通の服飾用とはちょっと違う。
フルチューンなのである。
針とかも特殊な物なのだが、やはり命は’カム’にある。
形状もあるが、素材、熱処理とかいろいろな組み合わせがある。
これにより’耐久性’がぜんぜんかわってしまう。
これも、完全なる’企業ノウハウ’となっているものだ。

なぜか、シートの表皮材に使われる布地は’厚い’のである。
また、パッドその物の硬さでは感触が硬くなるので’ワディング’というものを布地の裏面に貼り付ける。

それから、シート組み立てのしやすさを目的に’裏基布’(うらきふ’と読む)も貼り付ける。

以上、3つを同時に縫って行く。
が、家庭用のミシンではいちころである。
市販のミシンでも’標準仕様’では半日もたたずにカムが無くなってしまう。

数脚の試作を行い、形紙を調整して出来上がった物をもって例のごとく’承認会’である。
承認されて’はい、完成’となるのだが・・・。

以上がざっとした流れであるが、ここも奥が深いのでいろいろと見て行こう。

まずは’原反’である。
IBCではさすがにそこまでは手を出していなかったので、当然ながら購入品となる。
原反の製造は服飾関係と同じで、布地メーカーとなり、この分野は中部地区北部が有名である。
組長のなじみは、昔からの老舗である’川×織物’という会社である。
そこで、各自動車メーカーのカラーデザイナー、インテリアデザイナーとともに我々、シート製造メーカーとで’仕様’を決定していく。

デザインの人達は’色’とか’触感’にこだわってオーダーしていくだけである。
組長達は、難燃性、強度、伸び率、そして大きなファクターとして’現反幅’が大きく響いてくる。

上記の’形紙’が完成された時点で、各部分を布地の何処から取るのか、という通称’形入れ’という作業になる。
歩留まりを’最良’にしていくのだ。
この時の出来が、コストに大きく響いてくるのである。
CADを取り入れたのもこの部分が一番最初ではなかったのであろうか。
たしか当時は’○コップ・システム’と言って独自のプログラムであった。
(えらい金額を投入したらしい。)
後年、我々おなじみのC○TIAになっていった。

この’形入れ’では原反幅を、それこそ’mm単位’で調整していく。
そして、原反メーカー側としては’指定幅’によっては織機に乗らなくなる事がある。(コストアップに繋がる)
どーしても’駆け引き’になってしまうのだ。
生産台数、他を見込んで’価格の決定’がなされる。

紆余曲折、なんだかんだで’原反仕様’が決定する。

2004年8月13日