機構(1)
機構の話である。
当時の組長が携わった仕事のなかでは、やはり機構の部分がメインとなる。
シートに関する機構としては、FRシートを見ただけでも多岐に渡る。
スライド機構、リフター機構、クッションの奥行き調整機構、ランバーサポート機構、ヘッドレストの高さ、角度調整機構、他、中でも一番大きな機能要因となるのはリクライニング機構である。
このリクライニング機構、自動車メーカーにより呼び名が違う。
ニッ○ンはリクライニング・デバイス、マ○ダはシート・ナックル、ト○タはリクライニング・アジャスターと多彩である。
組長は客先で、この呼び名をよく間違える。相手は「????」である。
リクライニング機構についての話をして行こう。
大きく分けると、レバー式、ロータリー式に分かれる。
レバー式はレバー等を引いてシートバックをフリー状態とし、所望の位置まで倒してレバーを戻すと固定される奴である。
ロータリー式とはダイヤルみたいなものを回転していくとシートバックの角度がバリアブルに変化していき、所望の位置でダイヤルを止めると固定される奴である。
パワータイプも、ロータリー式の応用品である。
レバー式、ロータリー式の選定であるが、レバー式は日本国内及び北米で好まれる方向にあり、ロータリー式は欧州で好まれる方向にある。
ということで、欧州向けが設定されている車種にロータリー式が選定されている事が多くなる。
また、他に考慮しておかなければならない事として、2ドア車では’緊急脱出’を考えると当然ロータリー式は不利になる。
仕向け地によってはロータリー式+前倒れを組み込まなければならない。
現在、リクライニング機構はシートの両側にレイアウトされている。
が、昔、組長がこの世界に入った時には片側のみにしかレイアウトされていないのが主流であった。(通常、アウターにあった)
リクライニング機構はシート強度と密接な関係がある。
昔の法規は、静的強度のみで評価されていた。
それに対して動的強度となる衝突試験(ダイナミック試験)が追加されたのである。
単純に’機構を左右に2つ付ければいいんじゃない’と思われがちであるがそうはいかない。
スペックとして、「特定入力までは破壊してはならない」に対して、「特定入力以上があった場合、ある領域まで破壊しなければならない」という項目があるからだ。
これは’突起物になる’という理由と’再利用出来なくする’という考えがある。
機構を左右に2つ付けると、剛性が上がりすぎてしまい、壊れてくれないのである。
2004年8月4日