あんどれ(1)

アンドレと知り合ってすぐの話である。

皆さん、シートのパッドというのはご存知だろう。
柔らかい部分、表皮材(布地)の中にあり、フレームとの間にある緩衝材、いわゆるスポンジである。
そのパッドは一種のエポキシ剤であり、2種類の液の中に泡を作り、高圧を掛けてぶつけるのである。かきまぜるんだな。
そして、その液体を、形状の出来た型の中に放り込む。
むかーし、モコモコアイスと言うのがあった。
缶のふたを開けると倍くらいになるものであった。
そのものである。
体積としては、20〜30倍になる。
完成までの時間は、物にもよるが2〜5分位だ。

組長の入社直後、最初の仕事として’出来上がったパッド’の硬さを測っていた。
アンドレの指示である。
この、硬度測定というのは自動車の乗り心地に影響するものである。
目標値に無いものは当然、納入出来ないのである。
当時の車両開発では、試作の台数は100台単位で作っていた。(まあ、フェーズにもよるが・・)

そこで’良、不良を判別する’という仕事である。

OK品とNG品の山がある。
アンドレが来た。
NGの山のパッドをつかみ手で感触を見る。
すると、OK品の山に入れてしまった。
ポイッポイッ、次々と入れてしまう。
(これは’いかん事なのでは’組長は思った)
しかしながら、相手はアンドレである。
組長は新入社員である。何もいえない。
(職業経験はあったが、新入社員は新入社員だ!最近、間違っている奴が多いが・・・)

数日後、お客からアンドレに電話が入った。
Nという、厚木にある要塞のような所である。
客「パッドの硬度、おかしいぞ!!」怒っている。
ア「すいません、新人が測ったもので・・、すぐ、関係部署にあやまらせに行かせます」
組「??????(おれか)・・!」
どきどきである。初仕事がこれだ!!クビか?

しょうがない、組長はとぼとぼと厚木の要塞に行った。
組「すみません、パッドの硬度測ったの、自分です。申し訳ありません」
客「見かけない顔だな。新入社員か??」
組「はい、先週、入社しました。申し訳・・・」
客「じゃあ、お前じゃねえよ。だって不具合あったの4週前の納入分だもん!!」
組「・・・・(アンドレ!!)・・」

不具合はアンドレが測ったものであった。

2004年7月22日