彼女の後をつけて島根県でミゾにはまる

19歳のとき。
わしは長距離恋愛をしていた。
今思うと「バカ」そのものである。

純粋な時もあったものである。

月に1度、車で8時間かけて島根県まで会いに行っていた。
1年が過ぎようとしていたころ。

「・・・・・なんかコイツおかしいで。」

男が出来たニオイがプンプンだったのである。
「これはおかしい!」

いつもの月1デートの後、わしは車を出したあとすかさずわき道に隠れた。
「つけてやる!」
・・・暗いやつである。

足早に今来た道を早足で歩く。
・・・彼女だ!

わしは彼女を発見すると電柱の影に隠れた。
・・・怪しい。

彼女は家の方角と反対に歩いている。
「なんでだ?なんでなんだ?」

20mくらいの距離をとって彼女の後をついていく。
歩道には鉄板でフタがしてあるので音がしないように気をつける。
・・・彼女が電話ボックスに入った。
「ど、どこに電話しとるんじゃ?」

彼女は電話ボックスを出ると再び歩き出した。
つけて行ってどうなるものでもないのだが。

スタスタスタスタ。
忍者のように島根の農道を小走りに歩いている。

と、その時!
「わーーーーーーーーーーーーっ!」

島根の月夜わしの叫びがコダマした。
なんと!わしの体は歩道の下のミゾに胸までハマっていた。

落ち着いて上を見上げると、月がきれいであった。
・・・虫も鳴いている。

でも頭からミゾの上までは50cmくらいある。
下半身は泥にハマってドロドロである。
・・・びちゃ!・・・びちゃ!

やっとの思いで這いだしたわしは尾行をあきらめ車に戻った。

「くっさーーーーーーー!」
ミゾの泥は何ともいえぬニオイがした。

はいていたズボンを脱ぎ、パンツ姿で8時間運転して山口に戻った。

・・・ちなみにその彼女には1ヶ月後に「男ができたの」という理由でフラれた。

おわり