今日は、おごりますよ

とある、平穏な一日。
といっても平穏なのは、王様とその一派。
今日も、だらだら。昨日もだらだら。

「今日もですね」
「人聞き悪いことを言うな。今日は!だ」
だんだん、いつもの会話に成って来た。

「じゃ、とりあえず、行きますか」
「ええよ。メンツあつめろ」
集めろといっても集まるのはいつものメンバー、手下A、Bである。

手下Aが、きっぱりと言った。「今日は、私らお金ありません」

身も蓋も無い王様。「おまえら、お金あったことがあるの」

「いえ、いつもおごってもらってばかりでは、悪いです」
「そう思うなら、全額回収しようか」
「そうじゃないんです。今日は、おごりますよ」
「おまえらないんだろ」
食い逃げ事件が、頭に浮かぶ。

「ええ、今ないですけど、飲む前に稼いできます」
どうやら、パチンコのことらしい。

「じゃ、先に行って飲んでるから」
王様は、ギャンブルは、一切しない。
なぜなら、王様の人生そのものが、ギャンブルだからである。

一人で、飲むこと一時間。

手下Bがやって来た。
「いやー、駄目でした」
「で、いくら勝ったの」
「2万負けました。」
それだけあれば、3人で飲んでもお釣りはくる。
「それで、今いくらあるの?」
「すみませんけど、帰りの電車賃ないんで」

そうこうしている内に手下Aが帰ってきた。
「いやー、駄目でした」
「で、いくら勝ったの」
「2万負けました。」
またまたである。
「それで、今いくらあるの?」
「すみませんけど、帰りの電車賃ないんで」

オチまで、仲良く同じである。

なんのことは無い。結局素直に、最初から行っていれば、余裕で飲めたのであ
る。

手下Bが、つぶやく。
「いやー、悪銭身につかずですよ」

結局、王様が、その日もすべて支払ったのであった。

おわり