知らないんですか
王様は、今日も、社内を巡回中。
あちこち歩き回って、こっちでおしゃべり。
あっちで、おしゃべり。
「ちょっと来い」
たまちゃん次長が、呼んでいる。難しい顔をしてる。
こりゃ、また面倒事を頼まれそうだ。
しかし、王様はサラリーマン。
上司の、呼びだしには、マッハで対応。
「なんでしょうか」
きちんと、上司に対しての口調になっている。
「最近、お前の課の女子の服装が、派手すぎる。
一応、お客に呼ばれても、大丈夫な服装をしているべきだ」
「なんで、そんなこと俺に・・・」心でつぶやく王様。
「それに最近、社長が突然、社内視察してるし」
たまちゃんがつぶやく。
「そうなのね、それが本音なのね。」
王様は、心でつぶやいた。
そう、この会社では、創業社長は絶対的なのだ。
「承知しました。」
「お前、意味わかるよな?」
「おまかせください」
誰を指しているかは、すぐわかった。
今年の新入社員である。
しかも、女子である。
下手な、言い方をすれば、嫌われる。
王様は、作戦を練った。
自席にもどって、コーヒーカップを持つと、コーヒーを入れにまず、給湯室へ。
給湯室から、戻った王様。
めあての二人組のそばに、さりげなく寄った。
そうすると、向こうから声を掛けて来た。
「王様、仕事してるんですか?」
いきなり、一刀両断。
気をとりなおし、こちらも直球勝負。
「あのね、会社に、サンダルみたいのはいてきちゃいかんのよ。」
王様は、言った。
駄目な理由を説明しようとしたその時。
「えー、これサンダルじゃないですよ。ミュールって言うんですよ。
知らないんですか?おやじですねー」
さすがの王様も、一言も辺せない。
完敗である。
そのまま、無言で、自分の席に戻り、手下に八つ当たりをするのであった。
おわり