王様は、警察官
社内を、徘徊する王様。
左手には、コーヒーカップ、右手に孫の手。
上司がいようが、そんなことは気にしない。
たまに、席に戻ると、伝言メモが大量にはってある。
[折り返し、お電話ください]
[至急、連絡ください]
「用があるなら、また連絡してくるだろ」
すべてごみ箱にすて、また出掛けてしまう。
王様が、立ち寄る場所は決まっていない。
上司、先輩、部下、後輩、そして手下。
男女の区別もまったくない。
次の立ちより先を決めた、王様。
お気に入りの女性のそばに、行く。
とりとめない会話をしつつ、今日飲みに行こうと誘う。
「でさあ、今日飲みにいかない」
「いいですけど、ちょっと忙しいので、時間遅くなりますよ」
そう、彼女は数少ない、女性の飲み友達なのだ。
「じゃあ、先にみんなで行ってるよ」
何のことはない。
王様が会社を徘徊している理由の一つ。
それは、今日のメンバーを探しているのだ!
まだ、雑談を続けている王様に、質問が来た。
「ところで、仕事、終わったんですか?」
「仕事? してるよ、いつも」
「仕事しているとこ、あんまり見たことないんですけど。
いつも、ぶらぶらしてるし」
「あのねえ。」
王様が、改まった口調で、話を始めた。
「俺は、社内をパトロールしてるの。
トラブルが発生していないか、見回りをしてるの。
まあ、俺は警察官だな。
警察官が、忙しかったら大変だろう。」
「うん、そろそろパトロール開始だ。じゃ、後で」
唖然としている、彼女。王様は、別の人間を誘いにいった。
あとがき
後日、飲みに行った時、コメントを聞いた。
「なんか、その時は妙に納得したけど。
後で考えたら、絶対おかしい!」
まあ、そうだわな。
おわり