それでも飲んでゐる(6)
【大ジョッキを盗みカバンがパンパン編】
4人で飲みに行くと、店員がジョッキを下げるよりも飲むほうが早い現象が起こる。
「めんどくさいから2個ずつもってきてよ!」
浜のオヤジがまた無茶をする。
「ノルマ」である。
大ジョッキ5杯目ともなると精神的に「童心」に帰る。
ポケモンカードに熱中する子供と変わらない。
目の前のものがキラキラして見える。
また、
「飲み代、もったいねー!何かパクって帰らにゃ損じゃん!」
・・・よっぱらいなら必ず感じたことがあるはずだ。
わしはズボンのポケッッとから中国のグルグルお香が粉々になって出てきたことがある。
ある日は、なぜか大量の10円玉、5円玉が出てきた。
七味、塩、つまようじなどは基本で、割り箸は感謝された。
ズボンと背中のあいだに「額縁」が入っていたこともある。
ま・いいか!。
その日は店員が忙しいのか、ジョッキが減る気配が無い。
浜のオヤジは相変わらず皆の「ビール残量」をチェックしながら
「半分」になっているヤツにはすかさず新しい大ジョッキを注文する。
頼んでもないのに新しい大ジョッキが来たヤツは、一瞬ギャグマンガのような驚き顔をする。
浜のオヤジがその姿をみて喜ぶのだ。
残すことは許されない。
飲まなくてはいけない。
浜のオヤジの機嫌が悪いと、
「もっと飲めるようになれよ!」
と言われかねないからだ。
重さ的には、
「もっとスパイン勉強しろよ!」
と変わらない。
皆んな頑張って飲みまくる。
テーブルは瞬く間にジョッキで一杯になった。
ビールの入ったもの、入ってないもの。
箸でたたくと「演奏」ができそうである。
わしは「ジョッキをパクリたい!」という衝動にかられていて
止められない状態になっていた。
家で缶ビールをこれに入れて飲んだらさぞかしうまいに違いない!
「わし、これパクってもいいですかね?」
浜のオヤジ「2こ位もって帰っちまいなよ!」
おしぼりでジョッキをキレイに拭き、入るはずも無いカバンに2個ジョッキ・・・。
無理やり詰め込んだ。
もちろんチャックは閉まらない。
電車に乗ってもバレバレである。
次の日会社に行こうとしたらカバンからジョッキが2つゴロンと出てきた。
大ジョッキは、今は花瓶として活躍している。
おわり