食い逃げPart1

 

時代は20世紀の末。

王様が、まだCATIAワールドに、足を踏み込む前の時代である。

 

ちなみに、王様は、現在4社目である。

はしご酒ならぬ、はしご会社である。

 

定時時間の間際。

 

王様は、手下A手下Bとたばこを、吸って居た。

今日は、何もしなかったですねー」

「今日はじゃないだろ、今日だろ」

「じゃあ、今日も帰りますか」

「どうする、まっすぐ帰る?

そんなつもりは、まったくない王様である。

 

「じゃ、行きますか、たまには」

「一昨日もいっただろ」

「そういえば、昨日も、行ってますね」

「まあ、このメンバーでそろって行くのは、先週以来だな」

 

ようするに、全員メンバーを変えながら毎日のように、

飲みに行っている。

 

、おまえら、金あんのかよ

 

手下A手下Bは、同時に王様に、を下げた。

「ごちそうさまです」

またかよ。まあいい。おっ、定時だ。いくぞ

 

まだ、仕事をしている上司に、「じゃ、今日帰ります」

 

「おまえら、また、行くのかよ。明日は、全員遅刻するなよ」

 

飲んだ次の日、3人仲良く遅刻をするのは、別に珍しい事ではない。

 

いつもの店に行き、いつものつまみを食べ、雑談を繰り返す。

 

時間になり、王様が言った。

「よし、行ってこい」

 

手下Bが、のろのろと、店を予約しにいった。

 

3人には、お約束があった。

21:00になると軒目を切り上げ、軒目に行く。

 

軒目は、軒目の居酒屋の上にある、カラオケボックスだ。

 

手下Bのメンバーズカードで入り、それぞれ、お気に入りの歌を歌いまくる。

 

参考までに、人が歌っている時は、飲んでいるか、

選曲しているので、人の歌はだれも、聞いちゃいない

 

やがて、時間がきて、場所を変えようという話になった。

 

手下Bはとっくに終電は、無くなっている。

 

「俺は今日は帰るぞー」

わめく、王様

しかし、帰るそぶりはまったくない。

 

「よし、もう一軒いったら、俺は帰る」

王様は、そう宣言すると帰り仕度を始めた。

 

手下A、Bも素早く仕度を整え、王様の後を追う。

 

レジに並ぶ王様。手下はとっくに外へ出てしまった。

 

「あいつら、ほんとに払う気ないなー」

いつもの事なので、別に動揺はない。

 

「スイマせーん、お勘定お願い」

店員は、まったく出てこない。

 

たたずむ王様に、泥酔状態の手下が叫ぶ!

イッチマイましょう」

 

王様は、その意図を理解して、DASH!

どれくらい、走ったであろうか?

 

「やっちまったな、おい」

「やりましたね」

「食い逃げたー」

3人共、にやり!

 

食い逃げは、大成功である。

3軒目で、また大いに、盛り上がった。

 

しかも、翌日はだれも遅刻しなかった。

なぜなら、全員別な場所に直行、直帰。

遅刻なんぞは、関係なし

パーフェクトであった、ここまでは。

 

何日かたったある日、喫煙ルームで。

 

「この間の、ボックスの食い逃げ」と手下B

「忘れてたんですけど、俺、会員登録してあるんすよ」

 

「おまえ、まさか

 

「次の日、実家に連絡きましたよ。料金もらってないって

「しかも、親に言われて、帰ってすげーいやみ言われましたよ」

 

「で、金は?

 

「払いましたよ。けどもう2度とあそこ、いけませんよ」

「そうだな、もうあそこはいかない方がいいな。」

 

この誓いは、その次の週には、誰も覚えて無く、

しょうこりもなく、そのカラオケボックスには、

その後何度も通ったのであった。

 

おわり